人に慣れたキツネ、マウスで攻撃性に関わる脳領域に違い
· BehindLines 編集部 · 更新日
米ニューヨーク州のコーネル大学の研究者らは、人に対して従順になるよう選抜されたキツネの脳では、腹内側視床下部と呼ばれる深部の領域に違いがあると報告した。コーネル・クロニクルによると、結果は2026年11月2日に学術誌『カレント・バイオロジー(Current Biology)』に掲載された。サンプルは小規模で、著者らは従順さの原因を特定したとは主張していない。
1950年代に始まった実験
背景は古い。ギンギツネの実験的な育種は、1950年代末にシベリアで始まった。ロシアの遺伝学者らは、毛皮用の飼育場で飼育員に対して寛容な個体がいることに気づき、最も友好的な個体どうしを交配させた。コーネル・クロニクルによると、6世代後には、自ら人に近づく子を含む腹が現れた。これらの動物には、耳が垂れる、鼻先が短くなるなど、家畜化に伴う特徴も現れた。新しいのはこの研究の発表だけで、実験そのものは約70年前のものである。
チームが比較したもの
コーネル・クロニクルによると、コーネル大学の分子生物学・遺伝学助教、アイリーン・マルケンスコフ=パパディミトリウ氏(Eirene Markenscoff-Papadimitriou)の率いるチームは、ギンギツネの脳9個を調べた。内訳は、従順な個体が3個、攻撃性を目的に育種された個体が3個、野生の個体が3個である。注目したのは、脳の底部にある腹内側視床下部だ。発表資料によれば、この領域はマウスでは攻撃性、エネルギー消費、母性行動や社会行動に関わるが、これらのキツネではこれまであまり研究されていなかった。
研究者らは、蛍光RNA標識法を用いて細胞の種類を調べた。エストロゲン受容体αを発現する特定のニューロンの数が、群ごとに異なるかどうかを確かめるためだ。マウスでは、他の研究チームが以前に行った光遺伝学(光でニューロンを活性化する手法)の研究で、これらの細胞を刺激すると他のマウスを攻撃することが示されている。
結果と限界
コーネル大学によると、従順なキツネでは、調べた脳領域でこの受容体を発現するニューロンが少なかった。マルケンスコフ=パパディミトリウ氏は、選抜に伴う行動の変化の神経学的な基盤を理解したいと説明している。コーネル・クロニクルには細胞数や対応する統計結果は示されておらず、学術論文自体は確認できていない。
注意すべき点がいくつかある。9個の脳は少ない。ニューロンが少ないことと従順さの間の相関は、これらの細胞が行動の原因であることを証明せず、発表資料もそうは述べていない。攻撃性に関する知見はマウスのものであるため、キツネに当てはめるのは仮説にとどまる。さらに、家畜化がなぜこの領域を変えたのかは、まだ分かっていない。
今後の研究
コーネル・クロニクルによると、研究者らは家畜化がなぜこの領域に影響するのかを解明したいとしている。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のアンナ・クケコワ氏(Anna Kukekova)は、ゲノムの変異がこれらのニューロンの発達にどう影響するかを調べる可能性がある。マルケンスコフ=パパディミトリウ氏は、この研究は環境による圧力が比較的短い期間で脳の構造を作り変え得ることを示唆していると見ている。筆頭著者はジャレッド・クライン氏(Jared Klein、コーネル大学2025年卒)。共著者には、アンドルー・ミラー氏(Andrew Miller、コーネル大学)、およびロシア科学アカデミーのアナスタシヤ・ハルラモワ氏(Anastasiya Kharlamova)、アナスタシヤ・ウラジミロワ氏(Anastasiya Vladimirova)、ダリヤ・シェペレワ氏(Darya Shepeleva)らが含まれる。資金はコーネル大学の脊椎動物ゲノミクス・センターから提供された。
ポイント
- 掲載:コーネル大学によると、『カレント・バイオロジー』、2026年11月2日。
- サンプル:脳9個(従順3、攻撃性3、野生3)。
- 観察:従順なキツネの腹内側視床下部では、エストロゲン受容体αを発現するニューロンが少ない。
- 限界:小規模なサンプル、因果関係の証明なし、家畜化がこの領域に影響する理由は未解明。